読書と成長、進化

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私は、読書が好きなのですが、本を読むことに意味を見出さないという人がいます。

そういう人の理屈としては、体験こそが重要であって、本を読んだだけで実体験の伴わない知識は何ら意味を成さないということらしいです。

確かに、人は物事に名前を付けただけで、それについて理解したような気になってしまいがちですし、実体験が自己を形作るのに重要な役割を果たすというのは事実でしょう。

しかし、私は、読書はそれ自体が、自己形成のために重要な役割を果たしていると考えています。

体験から学ぶというのは、人間以外の動物でもできることです。
単純な神経系しかもたない生物にも学習機能は見出すことができます。

自分以外の個体の経験から、自ら体験したのと同様に「学び」が得られるのは、人間の人間たる所以と言えるでしょう。自分が自分の視点からだけ、物事を見て、感じ取るのではなく、相手の視点から、あるいは第三者的な視点からも、物事を見て、感じられる共感力を持っているのは、人間の大きな特徴です(NLPでは、ポジション・チェンジのテクニックは非常に重要なスキルになっています)。

つまり、人間は個人個人として生きているのと同時に、人類全体として経験や知識を共有し、成長・進化していく魂としての群体を形成していると言っても良いでしょう。

ところで、自分以外の人の経験や知識を共有する方法というのは、あるいはその人の経験・体験をすぐそばで見ているという方法の他に、その人と直接話をするという方法もあります。
そして、話をするというのは、当然「言葉」を用いるということになります。

もちろん、直接、話をすることによって、口調や表情、身振り手振りなど、非言語的なコミュニケーションによる情報を得ることもできますが、一方で、言葉からもかなり多くの情報を得ることは可能です。
(ただし、言葉は記号にすぎませんので、共通の文化的背景を持っていることが、少ない言葉で多くの情報を伝えるポイントになるということも確かです。事実かどうかは別として、エスキモーが雪の種類を表す単語を50以上も持っていたという話は有名ですし、そんな例を出さなくても、方言を考えてみると、一地方である状態を表す言葉が、他の地方ではどうしてもみつからないということもよくあります)

言葉による知識、経験の伝達は、個人の経験にとどまらない知識量・経験量の増大をもたらしますが、それは文字の発明により、更に加速していきます。

人が文字を持たず、言葉だけで意思や知識の伝達をしていたときは、言葉の変遷によって情報の劣化・変化も発生しますし、時代を超えた情報の伝達というのも口伝えという方法でしか実現しないことになります。ところが文字の発明により、人の知識・経験は時間と空間を超えて人類に伝播していくことになります。

インターネットの発明により、情報の伝達は、まさに光の速度で伝わるようになり、人類には知識・経験を種として共有するためのインフラが整ったといえます。一方で、マルチメディア情報のデジタル化は、文字によらない情報(画像・音声・動画など)も記録・伝達できるようになりましたが、それでも文字による情報伝達は、人間の創造性・想像性を刺激するためには非常に有効であることは間違いありません(そしてそれらが更なる進化を生み出すとも言えるでしょう)。

自己の体験のみに価値を見出し、それ以外の情報・知識を否定する態度は、オウム真理教事件で、世の中のエリートと言われる人たちが次々とカルトに嵌っていった事実からも、非常に危険な態度だと言わざるを得ません(彼らは、まさに頭でしか知識を学んでこなかったエセ・エリートと言えるかもしれませんがw)。

以前、「魔境」についての記事も書きましたが、真理に近づくための本当に真摯な態度というのは、何かについて妄信するということではなく、素直に受け入れ、頭ごなしに批判せず、客観的な視点からも判断するということではないでしょうか。

進化・DNA

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コメント

  1. ニベア より:

    初めまして、こんばんは。

    この記事に出会えて探していたピースが見つかった感じがしました。
    おかげで、今までなんとなく好きだな、くらいにしか思っていなかった読書の時間に、
    意味が添えられました。
    新たな視点を教えていただき、ありがとうございました。

    私にとって大きな出来事になり、お礼をせずにいられませんでした。
    一方的なコメント失礼いたしました。

    • Dr. Qdech より:

      ニベアさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます&承認遅くなっちゃってスミマセン。
      ちょっと忙しくて、気づくのが遅れました。

      僕は、この記事でも書いていますが、読書って、他の人の経験を自己の経験として得られる非常に重要なことだと思っています。

      僕が尊敬している経営者であるライフネット生命の創業者の出口治明氏は
      「人間は本・人・旅からしか学べない」
      とおっしゃっています。
      御本人ともお話させていただいたことがあるのですが、素晴らしい人ですよ。
      著書もたくさんありますので、もし読書がお好きなのであれば、ぜひ御一読をおすすめします。