評価することと育てること

 先日、twitterの中のつぶやきに刺激され、色々と考えが浮かんできたので、整理のためにブログに書いておくことにします。

 今の日本では、才能のある人を周囲が育て上げていくというのが非常に難しくなっているのではないかという気がします。もちろん、そのような中でも実力を発揮し、才能を花開かせる人はいるのですが、多くの人は、周囲の環境によって才能を開花させること無く凡庸な生活を送ることが多いように思います。
 これは、一般の会社でも同じで、少し前の時代に比べると、企業が人を育てるために使う費用というのは、かなり低くなって来ているのでは無いでしょうか。ここで言っている費用というのは、必ずしも教育費・研修費のような直接的なお金だけではなく、実務の中で仕事を覚えていく、所謂OJTの中で人材育成をしていく際に考えておかなければならないリスクのような、陰に隠れた費用も含んでのことです。
 私が属していたIT業界などでは(もちろん、他の業界でも同様の傾向ですが)、短期間・低価格・高品質を求められる傾向がどんどん強くなり、発注側も受注側も費用・時間をOJTに割く余力が無くなっているように感じます。短期間ではそれで何とか凌げても、将来を見越したとき、それでは組織として立ち行かなくなってしまうのは明らかです。

 そのような実態を考えると、今のように人を育てられなくなっているのは、バブル崩壊後、景気が悪くなっているからだというような気がしますが、実は、私自身はその前からのような気がちょっとしています。

 昔から「日本人は独創力に欠ける」ということがよく言われていました。
(最近、中国などの知的財産の侵害についてニュースになることが多いですが、その良し悪しは別として、かつて日本も通ってきた道だということは心に留めておくべきです)
 もちろん、海外の基礎研究やベースとなる製品をより良いものに改良し、経済発展を遂げてきたというのは良く知られるところです。しかし、実は必ずしも、日本人が独創性に欠けているわけではなく、その独創性を的確に評価し、育てていくという部分にこそ問題があったのではないか(そして今も続いている)と思います。

 ノーベル賞受賞者が後付のように文化勲章をもらうのはいつものことですし、日本で評価されなかったものが逆輸入によって再評価されるという例もたくさんあります。例えば、我々のようなコンサルタントが良く使うBSCやシックスシグマなども、元々、日本の経営や品質管理で行われていた手法を体系化したものと言えます。

 文化の面でも経営の面でも、適切な評価によって、人材や技術を育て上げ、基盤を強固にしていくことが組織・国を強くしていくことなのだろうなと思います。
 それを成し遂げていくには、やはり教育が必要であり、短期的なスパンだけではなく長期的にかつ俯瞰的なものの見方ができる人を増やしていかなければならないのでしょう。もちろん、教育者、経営者、政治家は、スローガンを掲げたり、理想論を語るだけではなく、それを現実に落とし込むための方法論を持っていなければならないのですが…。

 今年ももう少しで終わりです。
 来年は、日本の景気ももう少し良くなり、笑顔で過ごせる人々が少しでも増えるようにITコーディネータとして、そしてコンサルタントとしてお手伝いして行きたいと思っています。

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