【書評】ITエンジニアのための「すごい提案」の組み立て方

【書名】ITエンジニアのための「すごい提案」の組み立て方
【著者】石坂博之
【出版】中央経済社
【発行】2013.0701

タイトルの通り、IT業界の人向けの、提案の作り方の本。
自分の仕事としては、情報システムの提案を作るというよりは、RFPを出して提案を審査する側なのだが、最近、色々な提案を見ても、あまり提案依頼側の意図を汲んでくれていないような提案や、依頼側の想定を超える「おっ!」というような提案が少ないので、

  1. 自分自身の提案力向上
  2. 例によって、セミナーネタ集め

の2つを目的として読んでみることにした。

まずは、企業の投資には「攻めの投資」と「守りの投資」の2種類があり、同様にIT投資にも「攻めのIT投資」と「守りのIT投資」があるという一般論から始まる。
最近は、クラウド・コンピューティングが広まってきているという背景もあり、BPaaS(Business Process as a Service)という概念のもと、今後、益々、ビジネスがシビアになってくるというようなことが書いてあった。

第2章では、提案が顧客に受け入れられない例がいくつか提示されているが、突き詰めていくと、どれもお客様視点に立っていない、自分本位の提案になっているということが見えてくる。
IT投資にもタイミングがあるという説明でも、常にお客様のメリットを考えて提案する必要性について書いてある。

さて、実際の提案だが、お客様から出てくるRFPの通りに提案すればお客様の問題が解決するなどということはなく、RFP自体に問題があることが多いということが書いてあった。つまり、RFPにはお客様の真の要求が書いていないということが多々あるということである。
大きくは2つの理由があり、

  • RFPを書くのに慣れていない
  • 何らかの理由により、真の要求が書けない

ということにより、なかなか本当の要求が表面化していないということが書いてある。
これは、自分も感じていて、理由はともかくとして、RFPを表面的に読み、その裏にある意図がきちんと読み取られていない提案書が多いということは感覚的なものではあるが、事実である。
まずは、このような隠された意図をきちんと読み取るということが前提なのだが、その上で、きちんとしたコンセプトのもと、提案を進めていくということが書かれている。
ここでのコンセプトというのは、

  • お客様への利益の約束
  • お客様がどのように利益を得ることができるのか

ということである。これをきちんと提示することにより、訴求力のある提案となる。

詳細については、実際に本を読んでもらった方が良いのだが、「リスクはチャンス」ということについての記述は、改めて聞くと気付かされる部分があった。
リスクをなるべく小さくするというのは、気持ちとしてはわかるが、一方で、リスクヘッジの仕方が差別化につながっていくというのも事実である。単にコストとして上乗せするのではなく、別の方法を考えることによって、他社との差別化を図るというのは非常に重要な事だろう。

ちなみに「リスク」という言葉の語源は、「勇気を持って試みる」ということであり、自ら選んで未来を選択するという意味があるらしい。単に「危険」とか「危機」という意味でだけ捉えると、リスクがチャンスになり得るということがなかなか腑に落ちないかもしれない。

巻末には、提案を作るためのWBSも掲載されているので、参考にしてみるのも良いと思う。

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