【書評】巨大市場

【書名】巨大市場
【著者】深井律夫
【出版】角川文庫
【発行】2013.01.25

 中国を舞台にしたビジネス小説。
 主人公である銀行員の江草は「日中が協力すれば世界最強」という持論で、日本企業の中国進出を支援します。
 日本と中国の商習慣や国民性の違い、文化の違いなどで、すれ違いや対立などがあり、更にはアメリカの投資銀行からの妨害工作などもあり、ビジネス小説として、とてもおもしろく読めました。
 最初に書いた通り、主人公は「日中が協力すれば世界最強」という信念のもとで、仕事をしていますが、その根底には、お互いの文化・国民性を理解し、認め合ってこそ真に協力し合えるということがあるのかもしれません。

 物語は、主人公が新卒向けの就職セミナーで話をするところから始まります。
 その中で
日本人と中国人の間に、信頼関係がない
という言葉が出てきます。また、
嫌いと蔑視は違う。嫌いになるのは個人の自由だが、相手を根拠もなく先入観だけで軽蔑することは許されない
ということも言っています。

 昨今、中国との関係があまり良くない状況であり、中国や中国人に対してあまり良い感情を持っていない人も多いと思いますが、一方で、仕事をするとき、また組織を作るときに重要なことの一つとしてダイバーシティ・マネジメントという考え方があります。
 多様性を用いて、競争を優位に進めるという考え方ですが、それが可能になるためには、相手のことをしっかりと認めるということが必要になってきます。
 日本では、規格化した人間を作ってきた時代が長く続いてきて、それが日本の強さにつながってきた部分もあるのですが、組織として仕事をするときには、お互いの長所をうまく活かし合い、全体として強くなっていくということも重要でしょう。お互いの足を引っ張り合い、1+1が2どころか、0.8とか0.5になってしまうのではなく、3にも4にもなるような相乗効果を出せるような関係になっていければ良いですね。

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