正義の話(続き)

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前の記事の続き。

自分の世界を広げていくにつれ、利己的な行動よりも、周りのことを考えた行動の方が全体の利益を大きくするということが見えてくる。

プロスペクト理論という心理傾向を表す理論があるのだが、その柱の一つに「価値関数」というものがある。
簡単に言えば、

人間は得られる利益よりも、損失の方が重大に感じる

という心理傾向のこと。
つまり、人は1万円得られる喜びよりも、1万円失ったときの不満の方が大きく感じるという傾向にある。
そしてその比率は、およそ1:2~2.5と言われている。

人間が自分のことだけを考えたとき、できるだけ自分だけが得しようという動きになる。

簡単に考えるため、支払ったコストは考えないことにする。
もし、得られるお金の総額が100万円のとき、自分だけのことを考えたら、100万円全部を受け取ったときが、自分の満足度は最大化される。

ところがこれを2人で分けることを考えたとき、Aさんが100万円、Bさんが0円だったと考えると、Aさんの満足度は最大化されるが、逆にBさんの満足度は最低になる。

満足度を期待値からの差によって定義すると、二人で均等に分けたときの期待値は50万円だから、Aさんが総取りすると、

Aさんの満足度 = 100-50 = 50

と計算でき、逆にBさんの満足度は、得られるはずの50万円に至らなかったので、不満度を2倍にして

Bさんの満足度 = (0-50)×2 = -100

と計算でき、2人の満足度の合計は-50となる。

Aさんが得られる金額を10万円刻みで変化させてみると、2人の満足度の合計は表のように変化していき、満足度合計が最大化されるのは、結局2人が同額を得られた場合となるのがわかる。

Aさんの取り分 期待値との差 A満足度 Bさんの取り分 期待値との差 B満足度 嬉しさ合計
100 50 50 0 -50 -100 -50
90 40 40 10 -40 -80 -40
80 30 30 20 -30 -60 -30
70 20 20 30 -20 -40 -20
60 10 10 40 -10 -20 -10
50 0 0 50 0 0 0
40 -10 -20 60 10 10 -10
30 -20 -40 70 20 20 -20
20 -30 -60 80 30 30 -30
10 -40 -80 90 40 40 -40
0 -50 -100 100 50 50 -50

また、別のパターンを考えてみる。

Aさんは魚をたくさん持っていると考えてみよう。
100匹の魚を持っていれば、彼は満腹になるが、今、200匹の魚を持っているとしよう。
つまり、満腹を超えて100匹の魚を持っているわけだが、そのままでは満足度が上がるわけではない。

一方、Bさんは服を作るための織物をたくさん持っているとしよう。
3本の織物があれば、寒さを凌ぐための服が作れるが、今は6本の織物を持っている。
つまり服を作っても、まだ余る布を持っているわけだが、2着を一度に着られるわけでもない。

AさんとBさんはそれぞれ持っているものが異なり、自分の持っているものは余っているが、必要以上に持っていたとしても満足度が上がるわけではない。

では、AさんとBさんが、それぞれ持っているものを相手に与えたらどうだろう?

Aさんにとって不要だった魚がBさんの満足度を上げ、逆にBさんにとって不要だった織物がAさんの満足度を上げることに繋がる。

人は誰しも完全なわけではなく、得意な部分も苦手な部分もある。
それをお互いに補い合うことによって、頭打ちになっていた個人の満足度が全体として上がっていくことにつながる。

自分の属する社会にとって、自分には何が足りなくて、何を提供できるか考えることが社会全体の価値向上につながる。
自分の提供できるものは無いと、フリーライダーを決め込んだり、自分の価値観こそが絶対と、他の人の価値観を認めないことは社会の硬直を生み出し、結局は自らが得られるはずだった価値を自ら拒否し、捨ててしまう可能性につながるということも意識しながら、他の人との距離感や付き合い方を考えていく方が良いだろう。

おかしなスピ教祖や陰謀論にハマっていく人は、そもそも人の意見に耳をかさず、自分の都合の良い考え方だけを受け入れていくようになる。

  • ロジカルにものごとを考えること
  • 主張の根拠が信頼に足るものであるかを気にすること
  • 一方的なものの見方をしていないかに気をつけること

について、常に気にするようにしたい。

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