名前を背負って仕事をするということ

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多くの会社では年度末ですね。
学校も3月で終わり、新社会人になるという人も多いのではないでしょうか。

組織に属して仕事をする人、フリーで仕事をしている人。
世の中にはいろいろな人がいますが、たとえ自分ではどう思っていたとしても、「自分そのもの」を見てくれる相手というのは意外と少ないものです。

会社員であれば、「会社」を代表する人間として見られます。
当然のことながら、新人だからという甘えは許されませんし、自分の評価が同じ組織に属する他の同僚の評価にもつながっていくことになります。

それは会社という組織に留まらず、例えば「○○大学出身だから」とか、場合によっては「日本人だから」などという見方をされることもあります。
このようなステレオタイプ的なものの見方をされてしまうというのは、人間であれば仕方のないことでもあります。
だからこそ、人は自分自身の言葉や行動が自分のことだけではなく、他の人にも影響を及ぼすという可能性を念頭に置いておく必要があると思うのですが、実際には、あまり深く考えていないような人が多いような気がします。

会社員であれば、会社を代表するということを多少、気にするようなところもあると思いますが、個人事業主として仕事をしているような場合はどうでしょうか?

何らかの資格を使って仕事をしているような人の場合は、その資格の信頼にも繋がってきますし、そうではない場合でも、誰かの紹介で仕事をいただいているような場合は、その紹介者に対する責任も出てきます。

仕事を取れるような資格の場合は、倫理規程などが設定されていることが多いでしょうし、通常は資格者として責任ある行動が求められているはずです。

何らかの名前を背負って仕事をするということは、それによるメリットと同時に、他者に対する責任も負って仕事をするということでもあります。

ところが、世の中には、そういうメリットだけを享受し、責任は負いたくないという人たちも一定数いるのも事実です。
所謂、経歴詐称などがその一例です。

例えば、ある国の人は、海外でトラブルを起こしたときに、自国名を言わず「日本人だ」というとかいう話もあります。
これが事実かどうかはわかりませんが、自分自身が起こしたトラブルにより、同朋に悪い評判が立つのを恐れての嘘でしょう。他人のことなど考えないのであれば、別に嘘をつく必要はありませんから。

また、世の中では就職活動などの際に出身校を偽ったり、仕事の経歴を偽ったりするということもあるようです。
書類選考だけで落とされるということを懸念しての行為だと思いますが、バレたときのダメージが大きいのは容易に想像できます。
たまに政治家が経歴詐称がバレて辞任したり、有名なところではテレビなどでコメンテーターをしていたショーンKこと川上 伸一郎氏が盛りまくった学歴詐称がバレてテレビ・ラジオから姿を消したなどということもありますね。

バレたとしても、もう失うものは無いというような人は一か八かで詐称するのかもしれませんが、今の時代、どんなに取り繕おうとしても必ずバレますし、メリットなど無いと思っていた方が良いと思います。

最近では、就職の際にリファレンス・チェックと呼ばれる身元調査、経歴調査をされることも多いようです。

相手の経歴や実績について知りたいのは、就職先だけではなく、フリーランスに仕事を頼むクライアントでも同様です。
今どきは、フリーランスや転職志望者は、LinkedInなどで経歴をまとめたり、その他のSNS等で経歴を公開している場合も多いですが、それ自体の信憑性についてもどこかでチェックをしていかないと、上記のショーンKのようなことにもなりかねません。

※最近では、AIを使ったリファレンスチェックツールなどもあるようです。

私自身も自分で会社をやっていますので、例えばネット上から収集できる情報で、どんな感じでチェックができるか、ちょっとだけ説明します。
ちなみに、OSINT(Open Source Intelligence)というのは、一般公開されているあらゆる情報を収集・分析し、独自の情報を得る手法で、セキュリティ分野でも注目されています。

★法人化

現在は、登記されている法人(会社、NPO、社団法人etc.)には全て法人番号がついていて、検索サイトで法人番号が検索できるようになっています。
つまり、ここで検索できない法人は未登記であり、会社社長などと名乗っていたり、法人化しましたと言っていてもそれは嘘ということです。

国税庁法人番号公表サイト
https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/

たまに法人化もしていない、単なる個人事業主にも関わらず「〇〇会社」などという屋号を名乗っている人を見かけたりしますが、法律では、そのような屋号をつけてはいけないことになっています。

会社法7条(会社と誤認させる名称等の使用の禁止)

会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

会社法(e-Gov法令検索)

開業する際に税務署に開業届を出すことになっており、書類の中に屋号を書く場所があるのですが、上記のような屋号を書いていたら、多分、担当の人に指摘されると思いますので、恐らくそういう人は開業届すら出していないのではないかと想像します(絶対ではないです。書類を受け取った人が適当かもしれないし)。

なので、もし法人番号が見つからず、ブログなどで「四畳半一間株式会社代表取締役」などと名乗っていたら、その人はかなり怪しいですw。

法人の存在が判明したら、登記簿を取ることは誰でも可能です(有料ですけど)。
全部事項証明書を取れば、登記の変更内容(例えば代表取締役が変わったなど)もわかります。

★出身校

残念ながら、出身校に関しては第三者が照会しても情報を出してくれることは殆どありません。
出身校に関しては、学校から発行された卒業証明書を提出してもらうのが確実でしょう。
ちなみに私も数年前にある資格を取るために、卒業後20年以上経過しているのに大学の卒業証明を発行してもらいました(修士までと博士課程で別の大学だったので2校分)。

★特許等

特許に関しては、インターネットで検索可能です。

特許情報プラットフォーム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

簡易的な検索であれば、見れば分かる程度のサイトですが、簡単に使い方を説明すると

  1. 画面上部のメニューから検索対象を選びます。
    例えば取得した特許について検索したいのであれば「特許・実用新案」を選びます。
    画面の真ん中あたりに「簡易検索」のメニューもありますが、画面上部から選んだほうがわかりやすいです。
  2. 特許・実用新案のメニューにマウスを当てるとサブメニューが出ますので、そこから真ん中にある「特許・実用新案検索」を選びます。
  3. 画面が遷移して、検索キーワードが入力できるようになります。
    誰かの実績について調べたい場合は、検索項目として「発明者/考案者/著者」を選び、キーワードのところに名前を入れます。
    名前の入れ方にはちょっとコツがあって、私の場合は、「本田秀行」と「’本田?秀行’」の2つを半角スペースで区切って入力します。シングルクォーテーションで囲むのを忘れないように。
    これは、登録されているデータに姓と名が続けて書かれているものと間にスペースが入っているものが混在しているということの対応で、?によってワイルドカードになるので、間にスペースが入っているデータも検索されることになります。
    ただしはスペース以外のデータも拾ってくるので、そこは目視チェックが必要になります。
    文献種別等は必要に応じて選んでください。
    また、検索オプションで、公知日/発行日の範囲なども指定することが可能です。
  4. 必要な条件が入力できたら検索ボタンを押すと検索結果が表示されます。
    私の申請した特許については、
    「特開2004-199240」
    という公開番号で公開されていることがわかります。
  5. リンクをクリックすると、内容が表示されるので、中身の確認ができます。

こんな感じで、特許や意匠等についての実績を確認することが可能です。

★著書等

Amazonなどで検索すればかなり出てきますが、取り扱いの無い書籍に関しては検索されません。
日本で出版された書籍の殆どは国会図書館に蔵書されますので、そちらで検索してみましょう。
ここでは、商業出版だけではなく、博士論文なども検索できますので、そちらの実績調査にも使えます。

国立国会図書館サーチ(NDL Search)
https://iss.ndl.go.jp/

こちらも上のメニューから詳細検索を選び、画面に出てくる「著者・編者」というところに氏名を入力して検索してみると良いと思います。

私の場合「本田秀行」とだけ入力すると同姓同名の著者がたくさん出てきてしまうので、出版年のところに「2012」を入力します。

こちらの検索では雑誌の記事なども検索可能ですが、記事そのものが記名でなければうまくデータベースに載っていないものもあるので、もし雑誌等がわかるのであれば国会図書館まで行って現地で確認してみましょう(笑)。
また、これはあくまでも著者としての検索なので、ペンネームなどを使っていたらペンネームでの検索になりますし、本名を入れたからといって、必ずしも検索されるわけではないというところには注意が必要です。

★資格

免許や資格登録証などを確認するのが確実。
例えば、私がメインで使っているITコーディネータは、一応、ホームページで資格者の検索ができることになっていますが、全員が検索できるというわけでもないです(全員できるようにすれば良いと思うのですが…)。
取り敢えず、資格の登録証を提示してもらうのが良いでしょう。

ちなみに中小企業診断士の場合は、登録時に官報に掲載されます。
調べてみると個人情報に関わるような情報は検索できませんが、中小企業診断士の登録に関しては過去30年にわたって検索が可能でした。

官報検索!
https://search.kanpoo.jp/q/

こちらでキーワードとして
診断士 登録 ○○」←〇〇は氏名
で検索すると、対象データが検索されます。

ただし、一部漢字が伏字(@)になっている人もいるようで、そこは注意が必要です。
(山田太郎→山@太郎 など)
これで検索されなければ虚偽と言って間違いないと思います。

★管理サイトのアクセス実績

ホームページに広告を出して自社の製品やサービスの宣伝をしたいということもあると思います。
GoogleやYahoo!などに広告を出したり、Facebook等のSNSを使って広告宣伝することもあると思います。
また、場合によっては特定のサイトの広告枠を使いたいと思うこともあるでしょう。
サイトに広告を出そうという場合は、そのサイトのアクセス数が気になると思います。
管理者でなければ、なかなか正確なデータはわからないので、サイト管理者からGoogle Analytics等のデータを提示してもらうのが手っ取り早いのですが、その他にも解析サービスを使って、おおよそのデータを確認する方法もあります。

例えば、SimilarWebというサイトでは、概算値ではありますが、調べたいサイトにどのくらいのアクセスがあるかの推測値を出してくれます。

SimilarWeb
https://www.similarweb.com/

サイトを開き、入力フォームに調べたいサイトのURLを入力すると簡単に訪問者数を調べることができます。
ただし、このサービスでは、あまりアクセス数が無いサイト(月5000アクセス以下)の場合は、データが出てこないので注意が必要です。
しかし、10万アクセス以上があるようなサイトで、データが出てこないということはないでしょう。


さて、経歴や実績の詐称がないかどうかを調べる方法について少し紹介してみましたが、自分の言動が他の人の評判を落とす可能性があるということは、一方で、自分の、あるいは他の同様のカテゴリに属している人たちの評判が自分や他の人の評判や信頼を上げてくれるということもあるわけです。

僕は、このブログでもよく自立ということを書いていますが、自立した人間がお互いに協力しあい、相乗効果を出していくというのが理想的な社会だと思っています。

自分がどのような属性を持ち、どのような集団に属しているのかを考えながら、その中で相乗効果を出してお互いに高めあえるような社会にしていきたいものです。

責任

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