矛盾が生まれる理由

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

いつも読ませていただいているブログ「波動探求と日本再発見と物書きをしております。」に以下のような記事が掲載されていました。

【気づこう!】正直に生きたら絶対に生まれないもの!!!

この中で、「矛盾は、嘘から生まれる」という主張がされていたので、ちょっと考えてみた。

矛盾については、その言葉の成り立ちとなった物語を知っている人も多いと思いますが、「どんな盾も突き通してしまう矛」と「どんな矛も防ぐ盾」を売っていた商人が「その矛で、その盾を突いたらどうなるのだ?」と尋ねられ、言葉を失ったという話です。

つまり、Pという事象と、Pではない(-P)という事象が同時に成り立つという論理の辻褄が合わないことを「矛盾」と言います。

基本的に、この世界で起きていることに矛盾はありません。事実のみがあります

では、なぜ矛盾が起きるのか?

それを先に紹介したブログでは「嘘から生まれる」と言っていますが、正確に言えば、これだけでは少し説明不足かなと思います。

以前、このブログでも紹介したことがあるのですが、NLPでは、

The map is not the territory.(地図は土地ではない)

という有名な言葉があります。

我々は、全知全能の神ではありませんから、どうしてもその認識と現実の間にずれがあります。
我々が見ている世界というのは、知覚というフィルターを通してみた幻影に過ぎないということです。
(その制約を突破すべく、我々は想像力や科学を駆使して世界を認識しようとします。また、別の人は、瞑想などを通じて、非言語的に、この世界の成り立ちを直観的に認識しようとする人たちもいますね)

矛盾が生まれるというのは、神ならぬ我々が認識した世界の幻影と現実とのギャップ(世界の誤認識)が原因と言えるかなと思います。

このギャップが意図的に作られるのが「嘘」と言えるでしょう。

人間は誰しも基本的には矛盾が嫌いです。
(これは、心理学でも『一貫性の原理』として研究されています)

では、なぜ矛盾が生まれるような嘘を吐くのか?
自分でも矛盾が生まれるとスッキリしないのに、嘘を吐くというのは、不合理な行動にも思えます。

いろいろ理由は考えられますが、

  • 現実を認めたくないために、嘘を吐く

というのが大きな理由かなと思います。

現実を認めたくなくて、自分の都合の良いことだけを認識しているということになれば、それはもはや、本人にとっては嘘ではなく事実を言っているに過ぎません。
(子供が学校に行きたくなくて、お腹痛いと言っているようなもの)

もちろん、他の人からすれば、事実と異なるのですから「嘘」と言われる可能性はあるでしょう。ただし、それが意図的だったのかどうかということについてもきちんと認識した上で「嘘」だったのか、単なるミスや誤認だったのかは、思い込みではなく、しっかりと判断した上で、相手を評価すべきと思います(野党が与党や官僚のミスを攻め立てるときに、このようなことが多々あるように感じます)。

ただ、自分に都合の良いことだけを取り上げ、現実と異なる解釈で、おかしなことを言ったとしても、現実が言葉によって変わるわけではないですから、そこに矛盾が生じます。
意図的な嘘であれば、自分でも認識しているわけですから、尚更、ボロが出てくるでしょう。

そして、もう一つ。誰も嘘を言っていないのに、矛盾が生じる場合
これは、先程書いたように、人間の認識の限界から生じる矛盾です。

有名な譬え話に「群盲象を評す」というものがあります。
複数の盲人が、象の一部に触れて、その象の姿を語り合うという話です。

それぞれが自分の触った象を「壁のようだ」、「蛇のようだ」、「樹のようだ」、「扇のようだ」、「ロープのようだ」と主張するのですが、どの盲人も嘘を言っているわけではありません。
それぞれが現実(象)の一部について語っているだけなのですが、全体像を見ていないので、このような違いが出てきます。

いわゆる形式論理学では、「AでありかつAではない」という矛盾が起これば、それは間違いだとしますが、ヘーゲルの弁証法では、「AでありかつAではない」という矛盾を通し、より高い境地に進む(止揚、アウフヘーベン)と考えます。

以前もブログで書きましたが、同じ意見ばかりを取り入れるのではなく、自分と違う意見を受け入れ、対立・矛盾の合一から、より高みへと進歩するというのが、我々の成長には大切だと思います。

たとえば、ロープの上しか歩けない蟻を考えてみて下さい。

1番目の位置と9番目の位置に同時にいるということは無いですよね?
ところが、ある人は、その蟻が「1番目の位置にいた」と言い、別の人は「9番目の位置にいた」と言う。
お互いに、自分は正しいことを言っているので、相手を嘘つき呼ばわりしますが、ロープの端と端を繋ぎ合わせるというように、次元を上げて考えるとどちらも嘘はついていないのです。

蟻

広中平祐博士がフィールズ賞を受賞した「特異点解消理論」も基本的には、このように次元を上げて(媒介変数を加えて)、問題を解決します。

結局、「何故、矛盾が生まれたか?」を考えると

  •   嘘  → 事実と異なり、整合性が取れない → 矛盾
  • 事実誤認 → 事実と異なり、整合性が取れない → 矛盾

この2つのパターンがあると思います。

矛盾の原因を考えるときに、「観察結果や相手の言っていることが間違っている」と、自分自身が持っている情報、主張が正しいことを前提に考えていくというのも一つの方法です。
一方、「矛盾に見えるのは、世界の認識の仕方に部分があるのではないか?」「もっと、高次の見方は無いのか?」と考えてみることは、自分自身の意識を広げ、世界の見方を変えるための手段となるのではないでしょうか。

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学・思想情報へ
にほんブログ村

矛盾

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする